Today's me.

ほんの少し前までは肌寒いくらいだったのに、気付けばもう、歩くだけで汗を流すほど気温が上がっている。

日射しも強く、うっかり肌でも出そうものならあっという間に日焼けしてしまいそうだ。

なのに、全身を黒で染めなければいけない。

あまり好きではない制服に腕を通す。学校に行くのであれば、制服を着ていた方がいいだろう。

本来なら制服に縛られる立場にない。けれど、ほんの少しのミスで、あと1年間制服を着る羽目になってしまった。

やり直し出来ない、というのが人生の面白さだと思うけど、あの時ばかりはやり直しがしたくて堪らなかった。後悔先に立たずというのは本当らしい。


太陽との親和性を高めた上で、扉を開ける。

わざわざ深呼吸なんてしないけど、やっぱり家の外で吸う空気はどこか新鮮だった。

埃が積もった自転車に跨り、脚に力を込める。風を切って前へ進む感覚を思い出し、自粛で濁った心が爽快感に包まれる。

3年もの間、殆ど毎日通った道を、何も考えずに辿る。中学の頃の通学路と被っている部分があることを考慮すると、約6年間、同じ道を通っていることになる。なんだか感慨深い。


目的とする場所は山の上にあるため、到着するまで自転車に乗り続ける、なんてことはない。坂の下に着いたら自転車から降り、後はひたすら押して登るだけ。

家に引き籠もっていると、体力は自然に落ちていく。

4ヶ月前は何の苦もなく出来ていた事でも、今はもう出来なくなってしまっている。

体力が落ちたことに加えて、気温が上がったこともあり、想像以上の辛さを味わうことになってしまった。

滝のように汗を流しながら、フルマラソンをしているかのように酸素を取り込む。ただ歩いているだけなんだけど。

好きな女の子と目が合った時みたいに顔が紅くなっているのかな。なんて思いつつも、休まず足を動かす。


千里の道も一歩から。と言うように、細かいことの積み重ねが大事なのだ。今はまだ実感出来ていないかもしれないけど、いつか振り返った時にはきっと、自分が積み重ねたものの大きさに気付くことが出来る。


ゆっくり歩みを進めた僕は、20分後に目的地へ辿り着いた。

自粛によって、人気がなくなってしまった学校。普段とは違う静かさに違和感を覚える。仕方のない事だけれど、そう簡単には受け入れられない。賑やかすぎるあまりに「うるさい」と感じることもあったけど、賑やかじゃなくなった今、賑やかであることの有り難さに気付くことができた。


目的を果たして僕は、つい先程来た道を歩き始める。

来た時とは持っているものが違うけど、それ以外は概ね同じ。家を出る前は面倒くさいと感じていたけど、いざ家を出てみると案外楽しいものだ。

第2波がどうとかで騒がれているけど、たまには外へ出るのもいいかもしれない。

長い長い下り坂を、自転車で下る。

顔に当たる風が気持ちいい。




今日も1日、家に引き籠もっていた。

暇すぎる故に脳内で外出したのだが、まったくもって楽しくない。やっぱ家だわ。家以外勝たん。

一生家に居続けたいものである。


ではさよなら。ばいちゃ。