ふわりと鼻を包むscottie 〜Today's me〜
花屋の店先に並んだいろんな花を見ていた。
扇風機を確保した。
6人の人間が住んでいる我が家は、扇風機を2台保有している。扇風機保有家庭である。
私と妹は自分の部屋、それ以外は寝室で寝ているため、少なくとも3台は必要なのだ。しかし、金銭的な問題からか、それとも私に対する嫌がらせか、我が家には扇風機が2台しかない。
3つ部屋があるにも関わらず、2台しかない。しかも2台とも1つの部屋で使っているのだ。
そのため、私と妹は扇風機のない生活を送っている。
中学生の分際である妹の部屋に扇風機がないのは仕方ない。中学生の分際で扇風機を使うことなど許されないからだ。
しかし、県下トップクラスの偏差値を誇る学校に通っている、国内最高級の頭脳を持つ私の部屋に扇風機がないなんて有り得ない。愚の骨頂。ただのアホ。バカマヌケ。
両親と弟1、弟2の4人で2つ扇風機を使っているということは、扇風機は2人で1つということになる。
なのであれば、私と妹がそれぞれ0.5扇風機ずつ使っていないとおかしい。理論上ではそうなる。
しかし、例えいくら不平不満を垂らしたとしても、扇風機が錬成されることはない。世の中というのは非情なものなのだ。
そこで私は考えた。世界でも有数の頭脳を駆使して考えた。たくさん考えて、無形文化財に指定してもいいくらい価値のある結論を導き出した。
盗めばいい。
扇風機は1つの部屋に2つもいらない。扇風機密度が高すぎると逆に暑くなる。
家族が寝静まった頃を見計らって、私は犯行を行った。
漆黒に塗れたコードの先端にあるプラグをコンセントから抜き、自慢の肉体を活用して扇風機を持ち上げる。コンセントとプラグの結合が無に帰した今、扇風機を縛り付けるものなどない。この扇風機は自由の身である。
ウスノロな両親達は目を覚ますことなく、穏やかに寝息を立てていた。せいぜい4人で1つの扇風機をシェアするがいい。私は独占するがな。
妹が暑さに苦しまされている頃、私はたった1人、呟く。
「我々は宇宙人だ」
さよなら。ばいちゃ。