芯まで響くPunchのラッシュ 〜Today's me〜
すべては自分から始まる。
朝起きて早々、罪悪感に苛まれた。
いや、起きる前から嫌な予感はしていたのかもしれない。
「ああ。多分二度寝しちゃってるな」
そう感じながら惰眠を貪っていたのだから。
意識が覚醒し、まず時間を確認する。
8時51分。
出席確認を含んだHRは8時40分から10分間行われる。HR後すぐに授業が始まってしまうため、その10分間には授業の準備をする時間も含まれている。
深く考える必要もない。8時51分に起きたという事実を覆さない限り、私は遅刻したということになる。
30分遅刻するのはいいのだ。開き直ることが出来るから。
「あー、朝ごはん食べてからでいいか」
くらいの余裕はある。むしろ余裕しかない。
しかし、1分の遅刻となると話は別だ。
この世のありとあらゆるネガティブな感情に覆い尽くされ、やがて自分を見失う。それくらい罪深き行為なのだ。
何故1分なのだ。どうせなら1時間寝ていたかった。
悔しくて涙が出る。
いつまでも時間を守れないままだ。決まった時間に起きることすら出来ない。ルンバでさえ出来ることが出来ないなんて。
強いAI、弱いAIなど、人工知能技術が発展している今の世の中、いつシンギュラリティを迎えるのかわからない。
世界最高峰の頭脳を持つ人たちが、己をも脅かす危険性を孕む人工知能を開発している。
一方私は、ルンバと競っている。
いや、そもそも競えていない。勝負にすらなっていないのだ。
あまりの悲しさに、笑いがこみ上げてくる。
笑顔で涙を溢す私は、さぞかし滑稽なことだろう。
どれだけ言葉を並べようが、どれだけ感情を渦巻かせようが、遅刻した事実は覆らない。
担任に連絡しなければ。
そう考え、震える指で入力する。
「おはようございます。寝坊しました。」
いつまでも悲しさに打ちひしがれていても仕方ない。
まずは涙でぐちゃぐちゃになった顔を洗おう。
そう思い立ち洗面所に向かおうとしたところで、スマホが通知音を鳴らした。
画面を確認してみると、担任からの返事だった。
「おはよう。今日からHRは9:35からだよ」
さよなら。ばいちゃ。